マンションやアパートなどの賃貸物件を経営していますと、毎年確定申告をする必要があります。その際に部屋のリフォーム代を経費で落とせるケースもあることはご存じでしょうか。証明することでその年に払わなければならない税金を安くできます。部屋をキレイに改装する経費は「修繕費」と「資本支出」の2種類にわけられます。それぞれの定義と分類する基準などを考えてみましょう。
1.リフォームやリノベーションにかかる経費とは
リフォーム代はほとんどを経費として計上できます。リフォームやリノベーションは、建物としての最低限の機能や価値を守る上で必要とされるからです。賃貸物件の部屋は、住んでいる人が退去したら、次の人が気持ちよく入居できるように、部屋を新規同然まで清掃する必要があります。
床や壁などにできた傷、太陽の光でできた色あせ、水などでできたさびや腐食なども落とさなければなりません。必要に応じて、素材を交換することもあるでしょう。こうした一連の作業は「原状回復」と呼ばれます。原状回復費用は、一部を入居者に請求し、あらかじめもらった敷金から差し引くケースもありますが、基本的には大家さんや管理会社など貸主側の負担になります。
また、部屋を探している人の関心を引くため、リノベーションで部屋のイメージをガラッと変える場合もあるでしょう。もちろんリノベーションにも多額の費用がかかります。リノベーションにも建物の価値を守る上で必要だと判断される部分もありますが、全額の費用がそうなるとは限りません。
部屋を原状回復するためにかかる費用は「修繕費」と「資本的支出」に分かれます。どちらに分類されるかで、経費計上の判断が分かれますので注意が必要です。
2.修繕費とは何か
修繕費は、退去者の部屋に対する原状回復に必要なお金です。次の入居者が不快な思いをしないように、なるべく生活感を残さない形で部屋をリフォームします。このリフォームにかかったお金は、毎年全額必要経費として計上できます。必要経費を確定申告で証明できれば、最終的に税金を抑えられます。
原状回復作業には、床や壁などの経年劣化の修繕、水回りのさび、汚れ、腐食などへの対応が該当します。ダメージの度合いがひどい部分は丸ごと交換する必要もあるでしょう。また、退去者の部屋は汚れを残さないよう専門業者によるハウスクリーニングをする必要もあります。修繕費はまさに次の入居者がすぐにみつかるようにするための必要な費用なのです。修繕費は基本的にマンションやアパート経営に必要なお金として、確定申告の際は必要経費で落とすことができます。
3.資本的支出とは何か
資本的支出は部屋のレイアウトを意図的に変える「リノベーション」にかかった費用などのうち、資産価値がアップした部分に対するお金を指します。原状回復の修繕費が、次の入居者のために部屋をきれいにするうえで「最低限必要な作業」に対し、リノベーションは部屋を探している人の関心を寄せるために行う「自主的な改装」を意味します。
床や壁の素材を別のものに交換する、部屋を区切る壁を意図的になくして開放的にする、キッチンを移設するなどはリノベーションとされます。たとえ退去者の風呂場がカビだらけでも、きれいにするついでに一般の浴槽からシステムバスに切り替えるなどはリフォームではなく、リノベーションになります。
以上のように前よりも良質なものに交換した場合、同等のものに交換した場合の金額を超えた分が資本的支出となります。
4.資本的支出は減価償却される
資本的支出は数年かけて減価償却されます。リノベーションされた部分にも当然時間が経てば経つほど劣化していきます。劣化により価値が減った分を毎年計上していき、その部分の次の最新化に備えるのが減価償却です。
資本的支出は減価償却を受けながら毎年資産計上されていき、その分に応じた税金を払わなければなりません。
5.修繕費と資本的支出の分かれ目は？
リフォームやリノベーションを行いますと、修繕費か資本的支出か分かりづらい費用もあるでしょう。2種類の経費を分ける基準は主に4つです。
・資本的支出でも20万円未満
・工事がおよそ3年周期で行われているもの
・金額を問わず、明らかに原状回復に必要な工事
・修繕費とも資本的支出とも取れる経費のうち、60万円未満または取得価格の1割以下になるもの
以上の4つに該当する場合は、修繕費として計上されます。以上に該当せず、支出金額の30％または取得価格の10％のうち少ない金額を修繕費とし、残りは資本的支出とされます。
6.まとめ
マンションやアパートなど賃貸物件を経営していますと、リフォームによる必要経費を確定申告で証明できます。しかし経費の計算は修繕費と資本的支出の2種類に分かれるのがポイントです。
修繕費は退去者の部屋を原状回復するうえで必要な経費、資本的支出はリノベーションなど自主的な改装費用が主に該当します。資本的支出は、リノベーションなどにより価値がアップした部分が減価償却されながら資産計上されていきます。2つの違いを理解した上で、賃貸物件に関する確定申告の準備をしましょう。
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